簿記とは何か?これから勉強する方のためにわかりやすく簡単に解説

このページでは、これから簿記を勉強しようとお考えの方、初心者の方のために、最低限知っておくべき知識をわかりやすくまとめてみたいと思います。

簿記とはなんなのか?

簿記とは、企業や個人事業者が行う日々の営業取引を記録する技術・方法のことを言います。

これら事業者は、業務として行うすべての取引について、その内容を把握し業績を改善するために後々一定期間の業績や資産状況を確認する必要に迫られたり、また、義務としてそれらを税務署や株主などの外部に公表する必要が生じます。

ですから、事業者は、営業開始からすべての取引を継続的に記録し続けていなければならないのです。

そして、そのために欠かせない技術が簿記ということになります。

ですから簿記は、あらゆる業種の企業や個人事業者にとって必要な技術なのです。

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また、過去の営業取引を、自社で確認したり外部に公表したりするためには、常に公的に認められた一定の原則・ルールに従ってそれらの取引を記帳しておかなければなりません。

日本では、企業会計原則というものを中心に、簿記を行う上でのルールが定められています。(ちなみに、これらの会計基準は、おおむね国際的な基準にもなっています。)

ですから、もう少し厳密に言えば、簿記とは、一定の会計原則に則った営業取引の記録方法だということになります。

これから皆さんが学ぶ「簿記」は、会計原則等の理論を学ぶ会計学とは異なり、それらの理論に沿って実際に帳簿や財務諸表などを作成する技術を学ぶものであり、より実際的・実務的な側面の強い学問になっています。

簿記を学ぶメリットは?

以上のように、簿記は実務色の濃い学問です。

ですから、簿記を学ぶと、ある程度即戦力として社会に進出することができるというメリットがあります。簿記検定(主に日商2級以上)に合格していると、就職の際に役立ちます。

また、簿記は、経理や会計の職種を目指す人たちのように直接的に実務で使わなくとも、一般常識として習得することで、あらゆる企業体の経済活動への理解が進み、社会人としての見識が格段に広がります。

ですから、主婦の方や、まだ進路を定めていない学生の方にも有用です。

そういった意味で、あらゆる職業、立場の人たちから簿記検定は人気の資格となっています。

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簿記のスキルが必要な仕事

次に、簿記の習得が必要な職業と、それらの職業がどれぐらいのレベルの簿記能力が必要となるかを、日商簿記検定を基準にしてご紹介します。

(1)会社の経理課

会社の経理課では、売上げの入金確認や、費用の清算などをはじめとして主にその会社のお金の流れを把握し、場合によっては業務改善の提案などをします。

メーカー(製造業)の経理部では、原価計算も業務に入ることがあります。

就職する際の目安としては、簿記検定2級以上のスキルが必要です。実際に2級以上が応募の条件になることも多々あります。

(2)公認会計士

公認会計士の仕事は、主に大企業の監査になります。

監査とは、大規模な会社が社会的な信用を保つために、その会社が作成した外部公表用の財務諸表が会計基準に照らして正しく作成されているかどうかをチェックすることをいいます。

ですから、日商簿記1級をしのぐほど簿記に精通していなければまず公認会計士試験に合格できません。

公認会計士になるためには、公認会計士試験に合格し、国家資格を取得する必要があります。

(3)税理士

税理士も国家資格が必要な職業です。

税理士は公認会計士とは違い、主に個人事業者や中小企業を顧客に、会計業務から税金に関する業務(税務)を行う職業です。

こちらも公認会計士同様、簿記のスキルがかなりのレベルに達していなければ税理士試験に合格できません。日商簿記1級を裕に超えるのスキルが必要です。

税理士とは?業務の内容や報酬の額、試験の内容までわかりやすく解説

(4)公認会計士・税理士事務所の事務員

公認会計士事務所や税理士事務所に勤務する事務員にも必須のスキルと言えるでしょう。

やはり日商簿記2級以上がほしいところです。事務員募集の条件にもなることも多いようです。

(5)会社の経営者・個人事業者

会社の経営者や個人事業者の方にも簿記の知識は必要です。

小規模な事業者ならば、帳簿をつけたりなど自分で行うこともあります。

また、経理係を雇ったり、税理士に顧問になってもらう場合などでも、提出された書類が理解できなければなりません。

必ずしも日商簿記検定を受ける必要はありませんが、最低限3級レベルの知識は欲しいところです。

(6)その他、社会人の一般常識として

その他の職種であっても、また、地震の家計を把握するうえでも、最低限の一般常識として、日商簿記3級レベルのスキルがあると、お金の出入りについての知見が備わるものと思われます。

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簿記検定の種類

社会人向けの主要な簿記検定には、「日商簿記」と「全経簿記」の二種類があり、商業高校生向けの検定として「全商簿記」という検定があります。

一番ポピュラーで受験者数が多く、知名度が高いのはやはり、日商簿記検定です。

「簿記の1級」「簿記2級」などと略して言われる場合、通常、日商簿記検定のことを指しています。

では、それぞれ特徴を見てみましょう。

(1)日商簿記検定(主催:日本商工会議所)

もっとも認知度が高く、受験者数も多い社会人向け簿記検定。
受験資格はなく誰でも受験できる。

1級/2級/3級/初級の試験があり、3つの検定の中でもっとも合格率が低い。

合格率はおおむね例年以下のとおり。

 1級:10%前後
 2級:30%前後
 3級:40%前後
初級:55%前後

なお、1級合格が税理士試験の受験資格になっている。

(2)全経簿記能力検定(主催:公益社団法人 全国経理教育協会)

日商に次ぐ認知度の社会人向け簿記検定。
やはり、受験資格はなく誰でも受験できる。

上級/1級/2級/3級/基礎の試験があり、日商簿記よりもやや合格率が高い。

日商簿記よりも難易度が低いというよりも、配点方法などの違いにより合格がしやすい。

合格率は、

 上級:20%前後
 1級:「商業簿記・会計学」30%前後、「原価計算・工業簿記」55%前後
 2級:「商業簿記」35%前後、2級「工業簿記」80%前後
 3級:65%前後
 基礎:65%前後

なお、日商簿記とは難易度が以下のように対応している。

 日商1級=全経上級
 日商2級=全経1級
 日商3級=全経2級
日商初級=全経3級

全経上級もやはり合格すると税理士試験の受験資格が得られる。

(3)全商簿記検定(主催:全国商業高等学校協会)

全商簿記検定は高校生向けではあるが、受験資格に制限はないため誰でも受験できる。

ただし、あまり知名度は高くなく、難易度も低いものと認識されている。

1級/2級/3級の試験があるが、それぞれ合格率は40%〜60%と高い。

そのため日商、全経よりも難易度が低いとしか言いようがなく、日商、全経との対応関係も定かではない。

1級を合格しても税理士試験の受験資格にもならない。

以上、3つの簿記検定をざっと確認していただきましたが、これらの資格を就職などで活用する場合には特に、試験の知名度が重要です。

そのため、受験するなら日商簿記が一番おすすめです。

また、スクールの受講コースや、書店で売られている参考書などもほぼすべて「日商簿記」の難易度に合わせてあるため、日商簿記検定が一番勉強しやいともいえるでしょう。

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日商簿記検定の勉強方法

では次に、主に社会人の方のために、日商簿記検定の勉強方法を解説しましょう。

簿記を趣味でたしなむ場合には書店で参考書や問題集を購入して、独学で行うことも可能ですが、仕事で役立てるために勉強しようとするならスクールに入校するのがおすすめです。

おそらく簿記を学ぶ際には、ほぼ全ての方がまず、スクールに通うか独学で勉強するかを決め、スクールに通うならどの学校に通うかを決めることになるかと思われます。

簿記検定講座があるスクールはいくつもありますが、中でも有名なのは資格の大原TACでしょう。全国各地に教室があります。

また、これらの学校では、通信講座も設けていますので、近くに教室がなくても教材を送付してもらい、DVDやWeb上で動画を視聴しながら学ぶことも可能です。

●スクールに通うメリットとデメリット
スクールに通うメリットは、講師に直接質問することが可能なため、疑問点をその場で解決することができることや、同じ志を持った友人を作ることができる点でしょう。

デメリットとしては、教室に通わなければならないことから時間に制約があり、自由な時間に勉強できないところでしょう。

●通信講座のメリットとデメリット
通信講座のメリットは、ご自分の予定に合わせて自由な時間に勉強できるところでしょう。

デメリットとしては、時間的制約などがないため、自己管理がしっかりできないとなかなか継続することができず、時間とお金が無駄になってしまいやすい点でしょう。

●スクールや通信講座にかかる費用
上記有名校2校を基準に、費用の目安を解説します。

基本的に、これら2校では通学講座も通信講座もあまり費用の額はかわりません。(金額の幅は学習期間の長さや模擬試験の有無などによります。)

3級講座の目安:15,000〜25,000円
2級講座の目安:60,000〜90,000円
1級講座の目安:120,000〜200,000円

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次に、日商簿記検定の難易度順に勉強の仕方や学習期間を簡単に解説しましょう。

●簿記3級の勉強の仕方
3級の勉強は、よほど慎重に受験するのでなければ、書店で参考書や問題集を買ってきて、自宅で独学で受験しても合格は可能でしょう。

心配な方は、スクールや通信教育などの講座を受講するのがいいでしょう。

勉強時間の目安としては、全くの初心者から2、3ヶ月は必要でしょう。ゆっくりのペースで4〜5ヶ月といったところでしょうか。

●簿記2級の勉強の仕方
2級も自宅での独学で可能な人もいるかもしれませんが、どちらかといえばスクールに通うか通信講座の受講をおすすめします。2級から「工業簿記」が入ってきますので、基礎から学ぶ必要があります。

自信がある方は、3級を飛ばして2級から受験するという方もいます。

勉強時間の目安としては、3級合格レベルの方がさらに2、3ヶ月は最低限必要かと思われます。3級を飛ばして2級から学習する場合は6ヶ月ほどはかかるでしょう。

簿記1級の勉強の仕方

1級はそれなりの難関試験ですので、スクールに通うか通信講座の受講が必要でしょう。

いきなり1級を受験するのではなく、2級を合格してから挑みましょう。

勉強時間の目安としては、2級合格レベルの方がさらに6ヶ月〜1年はみっちり勉強する必要があるでしょう。

簿記に必要な道具・能力

簿記検定の受験には、まず、電卓が必要です。

ですが、電卓を早く打つスキルはそれほど必要ではなく、簿記を勉強していくうちに早くなってきますので、自然に身につく程度の速さで十分と考えてOKです。

それから、数字を扱いますので、数字に強い必要があります。

ただし、数学が苦手でも問題ありません。必要なのはほぼ四則演算(足し算・引き算・掛け算・割り算)だけになりますので、算数ができればOKです。

とはいえ、数字が1違うだけで致命的なミスとなりますので、きっちり数字が合わせられるような正確性は必要となります。

そのほか、実務で簿記を活用する際には、パソコンスキルも不可欠となるでしょう。表計算ソフトのExcelも習得しておくことをおすすめします。

また、職種によっては会計ソフトの習得も必要になるでしょうが、これは職場環境によって使用するソフトが異なりますので、就職してから習得しても問題ないスキルと言えるでしょう。

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簿記の基礎、仕訳とは?

それでは最後に、簿記の基本中の基本である仕訳(しわけ)について簡単に解説しようと思います。

仕訳とは何かを解説する前に、簿記の定義をもう一度確認しますと、冒頭では「企業や個人事業者が行う日々の営業取引を記録する技術・方法のこと」と定義しました。

この「日々の営業取引」を記録する際に、まずはじめに行うのが仕訳です。

営業取引は全て、まず仕訳されます。

例えば、手元に文房具店で事務用のボールペンを現金500円で購入した際のレシートがあったとしましょう。

その場合、以下のような仕訳を行います。

借 方 貸 方
(事務費)500円 (現金)500円

また、現金で30,000円の売上を受け取った際の領収書があった場合には次のような仕訳になり、

借 方 貸 方
(現金)30,000円 (売上)30,000円

商品を5,000円分現金で仕入れてきた場合には、次のような仕訳となります。

借 方 貸 方
(仕入)5,000円 (現金)5,000円

このように、全ての営業取引は、「現金」「売上」「仕入」「事務費」などの勘定科目を使って表し、それらを右と左に振り分けて記帳しますが、この作業を「仕訳」と言います。

仕訳の左側のことを簿記用語で「借方(かりかた)」、右側を「貸方(かしかた)」と呼びます。

費用を払った時は「現金」は右側(借方)なのに、なぜ売上を受け取った時は「現金」は左側(貸方)に記載するのか?など、疑問点は多々あると思いますが、それを学ぶことが簿記の第一歩となります。(疑問点は実際に勉強してみて解消してください。)

簿記を学ぶ際には、この仕訳をひたすら覚えることから始まります。

そして、日々の営業取引のすべてを仕訳していき、ある程度の期間(通常は1年)でそれらの金額をすべて集計し、整理(決算整理)します。

それから、その期間の業績を表した「損益計算書」と、その期間を経過したことで資産状況がどう変化したかを表す「貸借対照表」を作成することになります。

そのような、期首から期末にかけてのすべての取引の記帳方法、書類の作成方法のことを「簿記一巡」といい、それを1期、2期、3期と繰り返して記録し続けるのが簿記なのです。

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