世論調査によると、戦後、いわゆる「天皇制」が始まってからというもの、天皇および皇室の存在を肯定的に捉えていて、象徴天皇制の存続に賛成する国民は一貫して80%以上にのぼり、逆に「天皇制」を廃止すべきとする国民はわずか数%(5%前後)という状況が、戦後の長いあいだ続いてきいるそうです。
この数字は、天皇を「偉い・尊い」と感じている人の割合ではありません。が、それなりに天皇の偉大さや尊さを肯定的に捉えている国民が、そうでない国民よりもはるかに多いことを示した数字であると受け取ってもいいでしょう。
とはいえ、当然のことながら、天皇や皇室(天皇家)を、偉い・尊いと思うか思わないかは個人の自由であり、誰かに強制される筋のものではありません。
天皇や皇室というものがどういう存在なのかを知り、それを偉い・尊いと感じるか否かにかかっています。
では、天皇や皇室を敬う人々は、いったい天皇や皇室の、何が偉大で尊いと受け止めているのでしょうか?
このページでは、それを判断するためのわかりやすい判断材料をお渡ししようと思います。
天皇の何が尊いのか、率直に言うと…
率直に言うと、天皇、及び皇室の「歴史の長さ、古さ」、です。
こうサラッと言ってしまうと陳腐に聞こえるかもしれませんが、現にその長さや古さが現代に至るまで、天皇や皇室の存在の重みとして国内外から敬われてきたのです。
ポイントを幾つか列挙すると以下のようになります。
1)まず、天皇家は、現存している世界中の王室・王族のうちで、最古の歴史を持っています。それも、ずば抜けて長い歴史を誇っています。
2)それから、天皇陛下は、世界で唯一の「Emperor(皇帝)」の序列に数えられているということ。
3)そして、これも世界で唯一、神話とのつながりがある王室・王族であるということです。
では、これらのポイントについてもう少し詳しく見ていくことにしましょう。
天皇家・皇室は世界最古の歴史を持っている
世界に28ある王家のうちで、一つの王朝の歴史としてもっとも歴史が長く古いのは、まぎれもなく日本の天皇家・皇室です。
歴史の長い順から5つの王室を列挙すると以下のようになります。
【1位】 日本の皇室・天皇家
天皇家が何年続いているか定かな年数は不明ながら、少なくとも6世紀から1500年以上は確実に続いている。(一説によると初代神武天皇が即位してから2700年ほどが経過している)
【2位】 デンマークの王室
8世紀から続いているという説と、10世紀から続いているという説がある。
【3位】 イギリスの王室
1066年(11世紀)に王室の原型が作られた。
【4位】 スペインの王室
1479年(15世紀)から続いている。
【5位】 スウェーデンの王室
1818年(19世紀)から続いている。
以上のように、日本の皇室は、はっきりとした年数はわからないものの、後述するように神話の時代から続いていることから、誤解を恐れずに言えば、日本列島における有史以前から続いているのです。
日本国というよりも、日本列島の歴史がそのまま天皇家の歴史といってもいいかもしれません。
また、日本の皇室はただ家系が続いているというだけでなく、万世一系が保たれており、男系男子の皇統が未だに続いていることも大きなポイントと言えます。それも世界中で天皇家だけです。
天皇陛下は世界で唯一のEmperor(皇帝)である
天皇を英語で表すと「the Emperor of JAPAN」となります。つまり直訳すれば、「日本の皇帝」です。
そして、世界の王で「Emperor」の称号で呼ばれている方は、日本の天皇陛下をおいてほかにいません。
日本以外の王はなんと呼ばれているのかというと、すべて「King(王)」の称号で呼ばれています。
では、EmperorとKingは何が違うのかというと、Emperorというのはヨーロッパでは、ローマ皇帝の系譜のみをEmperorと呼び、それ以外の、一段格の下がる統治者のことをKingと呼ぶわけです。
つまり、Emperorというのは、その土地のもっとも由緒正しい、もっとも格の高い「支配者」の称号ということなのです。
そして、日本以外ではその系譜は途絶えてしまっているため、世界でEmperorの位は天皇陛下ただ一人という状況に至っているのです。
ちなみに、世界的には、Emperorと同格の位にPope(ローマ法王)があります。
とくに世界的な格付けが決まっているというわけではありませんが、各国政府には自国の大統領などの要人が国賓を迎える時の言葉遣いや服装には規範があります。
相手の位によってそれらを使い分けていますが、それによると日本の天皇陛下はほぼどの国でも最高の礼を尽くしてもてなされることになっています。
天皇家・皇室は、神話(古事記)の時代から続いている
天皇家は世界最古の歴史を持つと前述しましたが、皇室は、日本最古の書物である「古事記」の中から始まっています。
古事記とは、ギリシャ神話や北欧神話などに並ぶ、神話の一つです。
このページでは度々、「天皇家は神話から続いている」という表現を用いていますが、これには語弊があります。
というのは、そもそも古事記とは「天皇家・皇室の歴史」を記したものですので、天皇家が登場するのは当然だからです。
つまり、日本という国は、古事記という神話から、天皇家・皇室という存在を中心にしていまだに一つの連続性のうちに続いているということなのです。
もちろん、そんな国は世界中のどこにもありません。
天皇家は、天と地が分かれ、混沌の中に生まれた日本列島に天降った伊邪那岐命と伊邪那美命(男女の神)があらゆる自然現象を産み出し、その際に生まれた太陽神である天照大神の血を引く正統な家として現代でも続いているのです。
天皇家はなぜそんなに長く続いてきたのか?
ここまで見てきて、歴史の長さや古さは十分に理解していただけたと思います。
が、現在、天皇や皇室を敬っている人々は、世界最古であるとか、他国にないほどの歴史を有するから、という理由で敬っているのかというと、少しニュアンスが違うと思われます。
たしかにそれらは偉大さや尊さを確認する上で一つの指標にはなるでしょう。
しかし、それはあくまでも、日本人が天皇を敬い続けてきた結果でしかありません。
どういうことか説明しましょう。
日本で皇室がここまで敬われてきたことには、一つの大きな「日本の歴史の謎」があります。
それは、「なぜ、日本の長い歴史で何人もの権力者が現れ政治権力を握ってきたにもかかわらず誰も天皇家・皇室を廃絶しなかったのか」という謎です。
世界中の他の地域では、どんな偉大な支配者の家系も、必ず新しい支配者によって断絶の憂き目を見てきました。が、日本では、なぜかそうなりませんでした。
それぞれ権勢を振るい栄華を極めた、平安時代の藤原氏も平氏も、鎌倉時代の源氏、北条氏も、室町時代の足利氏も、それから織田信長、豊富秀吉、徳川家康も、誰も天皇家を廃絶して、自分が天皇にはなりませんでした。
本当にやろうと思えば、自分が天皇を名乗り、新しい皇室を作れるだけの権力を握っていたのにもかかわらず、です。
これが日本史における一つの大きな謎なのです。
この謎については解明されていませんが、やはりそれを断絶させることができないほど、当時の権力者たちでさえ、天皇および皇室を尊いもの、偉大な存在と感じていて、手を下すことができなかったのだと思わざるを得ません。
そして、第二次世界大戦の敗戦後にも、アメリカをはじめとする連合国は天皇家を廃絶せず、奇跡的に存続することとなり、結果として、世界最古の王室として現在に至っても続いているということなのです。
まとめ
以上のように、長い間この日本列島で、天皇家・皇室が偉いもの、尊いものとされてきた理由は、その歴史の長さに対する漠然とした歴史観のようなものと関係があります。
はじめに書いたように、天皇および天皇家を尊い、偉大だと感じるかどうかは「個人の自由」です。
ですから、その「個人の自由」という観念と、それだけ長いあいだ連綿と続いてきた歴史の長さ、古さに対する「畏敬の念」のようなものと、どちらに重きをおくかによって、その人個人の中での天皇および皇室の価値が決まるものだと捉えてもいいのではないでしょうか。
以上、参考になれば幸いです。