後見人とは? どんな手続きが必要? わかりやすく簡単に解説

後見人とは?

後見人(こうけんにん)とは、特殊な事情でまともな判断力がない人が、その本人に代わりさまざまな判断を行ったり、本人の利益を保護したりする人のことをいいます。

後見人を定めた制度には、「未成年後見制度」「成年後見制度」という制度が民法に定められています。

未成年者の場合は、通常、両親が保護者として本人の代わりに法的な代理行為を行いますが、何らかの理由で親権を行う人がいないような場合に後見人がつくことになります。

成年の場合は、認知症や知的障害、精神障害、病気や事故の後遺症等で判断力が低下したり、欠如しているような場合に後見人がつきます。

これらの制度を利用して正式に後見人を付けるには、家庭裁判所に申立てを行い、被後見人の状況等を報告し、さまざまな要件を満たさなければなりません。

また、被後見人の状況によって、後見人の権限が制限されるなどの決まりもあります。

スポンサードリンク

未成年後見人とは?

未成年後見人とは、わかりやすくいえば、両親の代わりに未成年者の法的な代理人を務める人のことをいいます。

両親が死亡するなど何らかの理由により親権者がいないか、もしくは親権者がいるにもかかわらずその親権者に「財産管理権」がない場合に後見人が付けられることになります。

親権には2つの要素があり、1つは子供の成長のために教育や監護を行う『身上監護権』と、もう1つは子供の財産を管理する『財産管理権』になります。

通常、未成年者にはその両方の権利(親権)を持った親がいるわけですが、親権を持った人がいないか、親権者が何らかの理由により『財産管理権』を喪失した場合に、それらを代わりに行う後見人が必要となるわけです。

未成年後見人には、個人のほか法人が就くこともできますし、複数の後見人が後見することも可能です。親族でも第三者でも後見人になれます。とくに資格や特殊な能力は必要とされません。(ただし、後述する後見人の欠格事由に該当する人は後見人になれません)

未成年後見人を付ける具体的な手続き

未成年後見人を付けるためには、2つの方法があります。

1つは、親権者が遺言で後見人を指定しておく方法。

もう1つは、未成年者本人や親族が家庭裁判所に申立てを行い、家庭裁判所が選任する方法になります。

これらの手続きの代行は、弁護士が行っており、司法書士が書類の作成のみを行えますので、どちらかに依頼するのが一般的です。

未成年後見人の仕事

未成年後見人の仕事は、親の代わりに親権を行うことです。

上述のとおり、未成年後見人には、『身上監護権』と『財産管理権』の両方を行う代理人と、『財産管理権』のみを行う代理人の2通りの後見人がいます。

つまり、その子供の成長のために教育や監護と、子供の財産の管理の両方を行う場合と、後者のみを行う場合があるわけです。

その後見の状況を家庭裁判所に報告するのも未成年後見人の職務とされています。

スポンサードリンク

成年後見人とは

成年後見人とは、わかりやすくいえば、病気などによりまともな判断ができない状態にある人につき、そのような状態にあることでその人が不利益をこうむらないように、代わりにさまざまな判断を行う人のことをいいます。

知的障害や精神障害のほか、認知症、脳疾患、事故の後遺症などにより判断能力が著しく低下したり、植物状態になってしまったような場合に後見人をつける必要が生じます。

高齢化社会が進んだ昨今では、とくに認知症で正常な判断力が亡くなってしまうことでこの制度が利用されるケースが増えています。

成年後見制度には、任意後見制度法定後見制度の2つがあります。

任意後見制度は、まだ判断能力がある人が、のちのち自分の判断能力が衰えたときのために後見人を正式に決めておき、いざ判断能力が低下したときにその人が後見人になるという制度です。

法定後見制度は、すでに判断能力に問題が生じている人のための制度で、判断能力別に、後見、保佐、補助という段階に別れていて、それぞれ後見人、保佐人、補助人という名で呼ばれます。

以上の両制度ともに、個人でも法人でも、親族でも第三者でも、基本的に誰でも後見人になれます。複数人の後見人をつけることも可能です。ただし、後述する欠格事項に該当する人は後見人になれません。

成年後見人をつける具体的な手続き

■任意後見制度の場合

任意後見制度を利用して任意後見人をつけるためには、まず任意後見人になる方と公証人役場に赴き、具体的にどのような内容の後見行為を行うかについて詳細を記載した公正証書を作成します。

その後、実際に被後見人になる人の判断力がて低下しはじめたときに、家庭裁判所に申立てを行い、これによって任意後見が開始されます。

■法定後見制度の場合

法定後見制度の手続きは、後見開始の申立てを家庭裁判所に対して行い、家庭裁判所がその申立てに基づいて法定後見人を選任し、後見が開始されます。

この制度の場合には、任意に後見人等は決められませんが、後見人等の候補者を申立書に記載しますので一定の希望を家庭裁判所に伝えることはできます。

一般的には、これらの手続きは弁護士、または司法書士に依頼して行います。

成年後見人の仕事

成年後見人の仕事は、身上監護財産管理の2種類が主なものとなります。

身上監護というのは、病院や介護施設との間で医療や介護に関する契約等をはじめとする判断を行うことです。

財産管理というのは、その被後見人の所有する財産の管理を行うことです。預貯金や現金の管理をはじめ、所有する不動産、有価証券等の管理、また確定申告などの税務処理について代理で行います。

任意後見制度の場合は、任意後見契約時に定めた行為を行うことができ、法定後見制度の場合は、本人の判断能力によって後見人、保佐人、補助人の権限が制限されますので、職務が若干異なります。

また、以上の職務は後見人が好き勝手に行えるというものではなく、一定の制限が設けられています。

その制限として、後見監督人というものを家庭裁判所が選任し、後見人を監督するというシステムもあります。

スポンサードリンク

後見人になれない者

以上のような未成年後見人、成年後見人には、民法に以下のような欠格事由の定めがあり、如何に該当する人は後見人にはなれないこととされています。

次に掲げる者は、後見人となることができない。
一 未成年者
二 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
三 破産者
四 被後見人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族
五 行方の知れない者

ーー『民法 第847条』

まず、未成年者、破産したことがある者、行方不明者は除外され、そのほか、過去に後見人等を家庭裁判所にやめさせられたことがある者、被後見人を訴えたことがある者とその親族は後見人になれないこととされています。

また、次のような定めもあり、不正行為や著しい不行跡をした場合は家庭裁判所に解任されることになります。

後見人に不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所は、後見監督人、被後見人若しくはその親族若しくは検察官の請求により又は職権で、これを解任することができる。

ーー『民法 第846条』

まとめ

以上のような後見人ですが、後見人は他人の財産を管理するという性質上、不正行為にもつながる非常にデリケートな制度です。

ですから、家庭裁判所が間に入り、さまざまな制限を設けるなどある程度厳格な制度設計がされています。

また、親族間でもいろいろな思惑があり、相続などとの関連で揉める原因にもなるのがこの制度の特徴といえます。そういったトラブルにならないように、綿密な話し合いのもと利用されるべき制度なのです。

また、高齢化が進んだ昨今では、「家庭信託」など、後見制度よりも柔軟に対応可能な新たな制度もできてきています。

スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク
スポンサーリンク