■中国の脅威について
集団的自衛権の行使容認が決定しました。
このたびの安倍内閣の閣議決定は、主に「中国の脅威」に対してなされたものだと世間では言われていますが、いったい「中国の脅威」とはどんなものなのでしょうか?
まず、我々日本人の頭に真っ先に思い浮かぶのは、やはり「尖閣諸島問題」でしょう。
尖閣諸島沖では現に、毎日のように中国の公船が領海侵犯を行っています。
この領海侵犯を見る限り、一定の脅威が日本に迫っていることはたしかのようです。
この尖閣諸島沖の問題をはじめとして、中国は日本に対して一体何をしようとしているのでしょうか。中国は、最終的に日本をどうしたいと考えているのでしょうか。
また、その脅威は、どれぐらい差し迫ったものなのでしょうか。
このページではそれらをわかりやすく解説します。
■中国の思惑
「中国の脅威」を考える際に、まず抑えておきたい知識があります。
それは、中国が「覇権主義国家」であるということです。
覇権主義国家とは、世界の覇権を握ろうとしている国のことをいいます。
ご存知のように、現在世界の覇権はアメリカが握っています。
そのため、中国はアメリカに対して非常に意識的であり、中華人民共和国建国以来、常にアメリカから覇権を奪うことを考えてきたといっても過言ではないのです。
では、そんな中国の、「対米戦略」を具体的に見て行きましょう。
1982年に、中国は太平洋上に「第一列島線」「第二列島線」からなる次のような「戦力展開の目標ライン」というものを定めました。
これは、「対米防衛線」などとも呼ばれていますが、実質的には、この地域における覇権(影響力)をアメリカから奪おうという大胆な戦略です。
中国はこれまで20年以上の歳月を費やして、着実にこの計画を推し進めてきたのです。
では、もう一歩踏み込んで見てみましょう。
中国はこの地域まで「防衛線」を拡大し、いったい何をしようというのでしょうか?
その答えは次のようなものです。
中国は、第二列島線まで原子力潜水艦を自由に潜航させようとしています。
原子力潜水艦とは、核ミサイルを搭載し、発射する機能を備えた潜水艦です。
つまり、中国は、第二列島線付近まで原子力潜水艦を航行させ、核ミサイルの射程にアメリカ本土を収めようとしているのです。
そして、そのような野心を持つ中国からしてみれば、尖閣諸島における日本の領有権は、自国の太平洋への進出を阻害するという意味で、大きな障害なのです。
そのため中国は、尖閣諸島はどのような手を使ってでも侵略しなければならない要所だと認識しているわけです。
ちなみに、その意味では沖縄を中心とした南西諸島の島々も、同様に中国が非常に興味を示している地域だといえます。
■中国は武力の行使に訴えてくるのか?
では、尖閣諸島を奪取するために、中国は軍隊を動かしてくるでしょうか。
その危険性は、現時点では、わりと低いものと見られています。
中国は、乱暴な国ではありますが、同時に非常にしたたかな国でもあります。
武力を行使してしまえば、当然、日米安保があるためアメリカを相手にしなければならない可能性があります。
そして、万が一アメリカが参戦しなくとも、日本の海上自衛隊は非常に優秀であり、かつ最新鋭の兵器を揃えているため、中国は武力を行使しても簡単に事が運べるとは思っていないのです。
では、実際にどのような手を使ってくるのでしょうか?
日本の海上自衛隊は、平時には民間人を排除する権限を持っていないため(民間人を排除するのは海上保安庁の役割であるため)、民間人を何十、何百もの漁船に乗せ海保が対処できないほどの数の船で尖閣諸島に接近、上陸させるなどの手段を用いてくることが考えられます。(このような方法ですと、日米安保の適用外でもあります)
先般の、集団的自衛権を行使容認した閣議決定内容の、その目的の第一番目には次のように書かれています。
1 武力攻撃に至らない侵害への対処
(1)我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増していることを考慮すれば、純然たる平時でも有事でもない事態が生じやすく、これにより更に重大な事態に至りかねないリスクを有している。こうした武力攻撃に至らない侵害に際し、警察機関と自衛隊を含む関係機関が基本的な役割分担を前提として、より緊密に協力し、いかなる不法行為に対しても切れ目のない十分な対応を確保するための態勢を整備することが一層重要な課題となっている。
(2)具体的には、こうした様々な不法行為に対処するため、警察や海上保安庁などの関係機関が、それぞれの任務と権限に応じて緊密に協力して対応するとの基本方針の下、各々(おのおの)の対応能力を向上させ、情報共有を含む連携を強化し、具体的な対応要領の検討や整備を行い、命令発出手続を迅速化するとともに、各種の演習や訓練を充実させるなど、各般の分野における必要な取組を一層強化することとする。
(3)このうち、手続の迅速化については、離島の周辺地域等において外部から武力攻撃に至らない侵害が発生し、近傍に警察力が存在しない場合や警察機関が直ちに対応できない場合(武装集団の所持する武器等のために対応できない場合を含む。)の対応において、治安出動や海上における警備行動を発令するための関連規定の適用関係についてあらかじめ十分に検討し、関係機関において共通の認識を確立しておくとともに、手続を経ている間に、不法行為による被害が拡大することがないよう、状況に応じた早期の下令や手続の迅速化のための方策について具体的に検討することとする。
(4)さらに、我が国の防衛に資する活動に現に従事する米軍部隊に対して攻撃が発生し、それが状況によっては武力攻撃にまで拡大していくような事態においても、自衛隊と米軍が緊密に連携して切れ目のない対応をすることが、我が国の安全の確保にとっても重要である。自衛隊と米軍部隊が連携して行う平素からの各種活動に際して、米軍部隊に対して武力攻撃に至らない侵害が発生した場合を想定し、自衛隊法第95条による武器等防護のための「武器の使用」の考え方を参考にしつつ、自衛隊と連携して我が国の防衛に資する活動(共同訓練を含む。)に現に従事している米軍部隊の武器等であれば、米国の要請又(また)は同意があることを前提に、当該武器等を防護するための自衛隊法第95条によるものと同様の極めて受動的かつ限定的な必要最小限の「武器の使用」を自衛隊が行うことができるよう、法整備をすることとする。
ーー国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について 2014年7月1日 国家安全保障会議決定 閣議決定
このように、2014年7月1日の閣議決定では,「武力攻撃に至らない侵害」、いわゆるグレーゾーンにも対処しうるような法整備の指針が示されているのです。
このことからも判るとおり、この閣議決定内容(集団的自衛権の行使容認)は、「中国の脅威」が第一に想定されたものだといえるのです。
事前に行われた政府の説明が、その趣旨にはっきりと触れられていなかったのは、そのように名指しすることで中国を刺激し、また、揚げ足をとられるなどの危険性を排除する意図があったことは言うまでもないでしょう。
また、中国の「武力攻撃によらない侵略」手段の大きなものとして「情報戦略」があります。
皆さんはおそらく、国内での次のような論調を聞いたことがあると思います。
・中国が尖閣諸島を狙っているのは、地下資源が欲しいからだ。
・戦争の回避や、経済的な利益を損なわないために、靖国参拝など中国が嫌がるようなことはしないほうがいい。
・戦争を回避するために、尖閣諸島の地下資源は日中が共同開発すればいい。
・戦争を回避するためなら、尖閣諸島などは中国にとられても構わない。
・日本政府は「領土問題」の存在を認め、外交で解決するべきだ。
これらの一部の日本国民、政治家たちの論調は、いずれも中国が仕掛ける「情報戦」の成果だといえます。
つまり、中国が、日本国内の左派系反日団体やマスコミ、親中派の政治家などを利用することにより、日本国内の世論を形成しているということです。
このような「情報戦略」も、やはり「武力攻撃によらない侵略」として大きな「中国の脅威」となっています。
■中国のしかける工作活動
上述のとおり、中国は日本の領土を侵略するため、「情報戦」を仕掛けてきています。
すでに日本国内には、中国のスパイや工作員を多数送り込まれています。
まだ記憶に新しいことと思いますが、2013年に可決、公布された「特定秘密保護法」は、主に、それら中国のスパイに対する対策として作られた、実質的な「スパイ防止法」です。
つまり、今般の「集団的自衛権の行使容認」と「特定秘密保護法」は、ともに「中国の脅威」から日本を守ることを意図して閣議決定、成立されたものなのです。
これに加え、沖縄在日米軍によるオスプレイの配備もまた、中国からの防衛手段として行われました。
この「オスプレイ配備」「秘密保護法案」「集団的自衛権の行使容認」に対しては、大々的なデモや抗議活動が展開され、報道されました。
そして、それらの反対活動には中国人が紛れ込んでいたという事実がネット上ですでに取り上げられています。
集団的自衛権行使容認反対デモで、横断幕がなぜか漢字が中国でしか使用されていない簡体字に。
オスプレイ反対集会でなぜか中国の国旗をあしらったうちわが。中国軍兵士の格好をした人の姿も。
特定秘密反故法案反対デモでも簡字体が。
この度の、集団的自衛権の行使容認問題でも、さまざまな反対意見が出ました。
もちろん、そのすべてが中国人工作員によるものではないでしょう。
しかし、その中には明らかに「中国の脅威」から意識を逸らし、他の問題(主にアメリカの起こす戦争や安倍首相の暴走など)にすり替えようとする意図が強く感じられるもの、またはそれらに影響され、集団的自衛権の本質を見失ったものが多く見られます。
今後は、そのような観点からさまざまな意見を眺めてみると良いでしょう。
このように、差し迫った「中国の脅威」とは、遥か彼方の尖閣諸島沖にあるものではなく、我々日本人の生活の中にすでに深く忍び込んでいるのです。
この中国の仕掛ける「情報戦」に対抗するために、我々日本人は、正しく「中国の脅威」を知る必要があります。
くれぐれも中国側の流す情報にはご注意下さい。