「集団安全保障」と「集団的自衛権」の違いについて

■集団安全保障とは?

「集団安全保障」とは、国連による、国際的な安全保障の基本的な考え方のことをいいます。

わかりやすく説明しますと、ある国連加盟国が、どこかの国から不法な攻撃を受けた場合には、その他の国連加盟国は一致団結してその被害国を支援する、という考え方になります。

その「支援」のためには、実際に軍事的な行動を起こす場合もありますし、救援物資や資金の援助にとどまることもありますが、いずれにせよ国連加盟国はどこの国も仲間であるとの考え方に基づいて、「集団安全保障」という体制をとっているわけです。

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■「集団安全保障」と「集団的自衛権」

しかし、この「集団安全保障」という考え方には問題点がいくつもあります。

問題点の一つは、そのような事態が起こった場合に、その事態について国連が正確な状況を把握し、適切な措置を施すまでには時間がかかるという点です。

不法な攻撃を仕掛けてきた国は、もちろんそんな時間的猶予を与えてはくれません。

それから、もう一つの問題点は、国連の安保理全体が「適切な措置」を必死に知恵を絞って考えだしたとしても、常任理事国(アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国)には拒否権がありますので、この5カ国のうちの1カ国でも反対した場合には、その「適切な措置」は実行に移されません。

その不法な攻撃を実行した国が、常任理事国5カ国のいずれかと親密な関係にあったような場合には、「適切な措置」が実行されないことは十分にありえるわけです。

つまり、「集団安全保障」とは、考え方としては理想的でも、時間的な問題や、実際に機能すらしない可能性さえあるものなのです。

そこで、国連では、そのような場合を想定して、国連の「適切な措置」が実行されるまでの間、または「適切な措置」を実行できないような場合に、「個別的自衛権」「集団的自衛権」という自衛の権利を行使してもよいと、国連加盟国のすべてに対して認めているのです。

ここでいう「個別的自衛権」とは、不法な攻撃を受けた国が自衛し、反撃する権利(自国で何とかする権利)のことをいい、「集団的自衛権」とは、同盟国などが被害国を支援し、一緒になって反撃する権利(仲間うちで何とかする権利)をいいます。

このように、「集団的自衛権」という権利は、国連による「集団安全保障」の欠点を補うべく国連加盟国に与えられた「固有の権利」(当然の権利)なのです。

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