■集団的自衛権と「戦争」
このページでは、集団的自衛権の行使容認が閣議決定されたことで、日本国民が「戦争」に巻き込まれる可能性について考察しています。
この集団的自衛権の容認によって、今後、日本国民が巻き込まれる可能性のある「戦争」は、大きく以下の3パターンに分類されます。
1 日本の政治家等の身勝手により起こる戦争
2 同盟国が攻撃され、その反撃に加担する戦争
3 日本がどこかの国に一方的に攻撃され、やむをえず反撃することで起こる戦争
では、もう少し具体的に、実情に即して見て行きましょう。
1の戦争については明確に憲法9条が禁止しています。
この点についての解釈は、この度の安倍内閣による憲法解釈の変更でもなんら変更はされていませんので、ほぼ問題ないと言えます。
2の戦争は、この度の閣議決定により新たに可能性として浮上した戦争ということになります。
具体的な同盟国にはアメリカが想定され、その同盟国アメリカがどこかの国に攻撃を受けた場合に、その反撃として起こる戦争に加担しなければならない可能性があります。
ただし、イラク戦争時に自衛隊はすでにイラクのサマワへ出兵させられています。ですので、これまでもアメリカの戦争にはまったく無関係であったとも言えません。
つまり、これまでも、この「2の戦争」にはなんとなく参加させられてきたというのが実情でしょう。
次に3についてです。
これは、具体的な相手国には、日本の敵国である隣国の中国と韓国が想定されます。
中国による尖閣諸島沖の領海侵犯、韓国による竹島不法占拠など、実際に今後、日本に対して武力の行使が行われるのではないかという圧力を感じ、懸念している国民の方々が多くいることと思います。
ちなみに、集団的自衛権の行使容認についてのメディアの報道に、日本がとうとう「戦争ができる国になった」というニュアンスが頻繁に用いられていますが、日本は以前から他国に攻撃された際に反撃する権利を有しています。(その権利を「個別的自衛権」といいます。)
ですので、日本は以前から「戦争できる国」なのであり、集団的自衛権の行使容認によって「戦争できる国」になったというのは、明らかな誤りです。ですので、そのような印象操作には騙されないようにしましょう。
では整理します。
上記で、現在、我が国が参加しなければならない可能性のある3つの戦争がより具体的になりました。
それを列挙し直しますと以下のようになります。
1 日本の政治家等の身勝手により起こる戦争
2 アメリカが攻撃され、その反撃に加担する戦争
3 日本が中国や韓国に一方的に攻撃され、やむをえず反撃することで起こる戦争
これが現在、日本国民の直面する可能性の高い戦争になります。(1については、憲法が明確に禁止しており、安倍内閣もその憲法解釈を踏襲していますので、除外の意味を込めて棒線を引いておきました。)
つまり、この2種類の戦争、
A アメリカが攻撃され、その反撃に加担する戦争
B 日本が中国や韓国に一方的に攻撃され、やむをえず反撃することで起こる戦争
この2つが今後、日本国民の直面する可能性の高い戦争ということになります。
■「A アメリカが攻撃され、その反撃に加担する戦争」について
では、この2つの戦争について、さらに詳しく見て行きましょう。
まずは「A」についてです。
多くのマスコミや反対派の国民が真っ先に思い浮かべるのがこの「A」であることは言うまでもありません。この「A」を指して「戦争が出来るようになった」などと言っているわけです。
まず、アメリカ主導の戦争として、9.11同時多発テロ後に起こったアフガニスタンでの紛争やイラク戦争は記憶に新しいところです。
これらのアメリカの軍事行動に、集団的自衛権の行使が可能となる今後は、日本はこれまで以上に深く付き合わされる危険性は否定できません。自衛隊が戦地へおもむき、命を落とすような事態も十分想定されます。
アフガニスタン、イラクでの軍事作戦の難航により、アメリカ国内の世論が反戦ムードになりつつあるとはいえ、覇権国家アメリカが今後世界のどこかで戦争を行う可能性は高いでしょう。
そのつど日本は集団的自衛権の行使により参加を検討させられることが予想されます。
では、集団的自衛権の行使により「A」の戦争に参加する場合の具体的な手順についてご説明します。
まず、大前提として、アメリカがどこかの国から攻撃を受ける必要があります。そして、アメリカがその国に反撃をする際に、日本に何らかの支援を要請する必要もあります。
それを受け、日本では国会で審議が行われ、集団的自衛権を行使するかどうか、行使する場合にはどの程度手を貸すかを決定します。ここが肝心です。
集団的自衛権とは、あくまでも「権利」であり「義務」ではありません。ですので、必ずしも自衛隊が戦地へ赴くとは限りません。権利を行使しない可能性も選択肢としてはありますし、後方支援に限定して「権利」を行使することも十分考えられます。
そして、国会での審議の結果、決定した方針に沿って実行される運びとなります。
これが、集団的自衛権の行使により可能となる戦争参加の具体的な手順です。
ただし、政府の閣議決定によると、集団的自衛権の「限定容認」となっていますので、これから行われるさまざまな法整備により、無制限に戦争参加するのではなく、なにがしかの規定を設けることにより、「出来ない事」と「出来る事」が決まることになりますので、そちらの経過を見守る事にしましょう。
■「B 日本が中国や韓国に一方的に攻撃され、やむをえず反撃することで起こる戦争」について
次に「B」です。
「B」については、中国と韓国を想定していますが、現実的に危険度が高い、対中国との戦争について見て行きたいと思います。
まず、中国との戦争を考えると真っ先に思い浮かぶのが「尖閣諸島沖の領海侵犯」だと思います。
この問題は、いったいどの程度「戦争」に発展する可能性があるのでしょうか。これについて少し掘り下げて解説します。
まず、中国は、何のために尖閣諸島沖で領海侵犯を繰り返しているのでしょうか?
日本では一般的に、尖閣諸島の地下に眠る「資源」が中国の目的であるとの報道がなされています。
が、実際のところはそんな生易しいものではないようです。
Wikipediaの「尖閣諸島問題」のページには次のように書かれています。
中国による沖縄の領有権の主張
(……)韓国の東亜日報によれば、2012年7月12日に中国国防大学戦略研究所長の金一南少将は中国ラジオ公社において「釣魚島(尖閣諸島)に関しては日本側に必ず、行動で見せてやらなければならない」「沖縄の中国への帰属問題を正式に議論しなければならない」「沖縄は本来、琉球という王国だったが1879年に日本が強制的に占領」したとしたうえで、(中略)「日本は琉球から退くのが当然」と主張した。
2012年11月14日、中国、韓国、ロシアによる「東アジアにおける安全保障と協力」会議で、中国外務省付属国際問題研究所のゴ・シャンガン副所長は「日本の領土は北海道、本州、四国、九州4島に限られており、北方領土、竹島、尖閣諸島にくわえて沖縄も放棄すべきだ」と公式に演説した。そのためには中国、ロシア、韓国による反日統一共同戦線を組んで米国の協力を得たうえで、サンフランシスコ講和条約に代わって日本の領土を縮小する新たな講和条約を制定しなければいけない、と提案した。モスクワ国際関係大学国際調査センターのアンドレイ・イヴァノフは、この発言が中国外務省の正式機関の幹部で中国外交政策の策定者から出たことに対し、中国指導部の意向を反映していると述べている。
中国は、ロシアに対し、北方領土問題においてロシアを支持する代わりに、ロシアも尖閣諸島問題において中国の主張を支持するよう2010年ごろから働きかけている。ただし、日本との関係を重視するロシアは、中国の提案を受け入れていない。ー―Wikipedia 「尖閣諸島問題」より
日本のマスコミはいっさい報道していませんが、このように、中国は日本への侵略の意志(沖縄の領有)をはっきりと表明しています。
「日本側に必ず、行動で見せてやらなければならない」というあたりに武力の行使=戦争のニュアンスさえたたえています。
また、そのような発言の背後にはこんな事実があります。
中国は1982年に「戦力展開の目標ライン」というものを定め、以下のような第一列島線と第二列島線という線を引いて、それぞれ2010年、2020年までに実現するという目標を立てています。
<img src=”http://wakariyasuku.org/img/senkaku.gif” alt=”” width=”90%” />
ご覧のように、尖閣諸島は第一列島線の真上に位置しています。
ちなみに、第一列島線は2010年までに実現する予定でしたが、すでに期日が過ぎているため、中国側は焦っているのです。
日本の集団的自衛権の行使は、日米同盟の強化や、日本と同様に領土を脅かされている東南アジア諸国との連携を強め、中国に対する抑止力を高める効果があるとされています。
たしかに、アメリカの戦争に巻き込まれる危険はありますが、中国の脅威は、すでに目前まで迫っているのです。
アメリカに付き合わされる戦争では、どこか遠くの戦場へ自衛隊を送り込む事になるでしょう。
しかし、中国の脅威は、まさに我々が生活を営んでいるこの日本列島が戦場となる可能性があります。
中国の脅威を考える場合、マスコミが報道しない事もあって、とかく楽観しがちです。
しかし、政府はなぜか憲法改正を経ず、解釈改憲という形で急いで集団的自衛権の行使容認を決めました。
また、前年に可決された特定秘密保護法も、中国のスパイが国内に暗躍している事実を重大視した事が、あのようなやや強引な手法での可決を見た要因ではないか言われています。
そのような政府の動向を考えあわせると、中国の危機は我々国民が肌で感じているよりももっと緊急の事態を迎えているのかもしれません。